鳥栖 対 新潟 レビュー 2026.10.21
新潟に見せつけられた「準備」と「覚悟」の差
3連勝で臨んだ新潟戦。
やっていることは、間違っていない。戦術的にも、スタッツ的にも、新潟を上回るものは見せていた。
それでも、負ける。
1. 3連勝で迎えた一戦
この試合では、長澤がやや本来の状態ではないように見えた。特に気になったのは、ボールを捨てるべき場面でもつなごうとするプレー。失点シーンも、タファが一度切ればよかったボールをつなごうとしたところから、わずかなズレが生まれた印象がある。
失点は、大きな逆サイドへの展開からクロスを入れられ、タファがモラエスを見逃して対応しきれなかったもの。
ただ、これは単なるマークやポジショニングの問題なのだろうか。
逆サイドへの展開にどうスライドするのか。誰が誰を見るのか。クロスに対してどこを消すのか。
そうした約束事が、チーム全体でどこまで共有されているのか。鳥栖は、まだ詰めきれていない。
2. 後半開始からの交代に見えた、勝負への覚悟
後半開始から今津、塩浜を投入。育成や成長を考えれば選択肢はいろいろあるが、この試合で必要なのは、目の前の試合をどうするかだった。
ここで変える。ここから追いつきにいく。その意思は伝わってきた。
さらに芳野、合戸を投入し、失点のリスクを背負ってでも攻撃に人数をかける。これは賭けだが、追いかける以上、どこかでリスクを取る必要がある。何もせずに負けるより、勝つために動く。その判断は評価したい。
しかし、その後に投入された桑山に2点目を決められる。安藤が競り負け、芳野の入った右サイドから切り込まれての失点だった。
点を取りにいくためにリスクを引き受ける。その判断をした以上、重要なのはリスクをどこまでコントロールできるか。そこまで含めて、チームの完成度が問われる。
3. 芳野を右に置くことで生まれる、別の問題
個人的に気になったのが、芳野投入後の配置だ。
吉田を右に置く場合は左肩上がりとなり、安藤が左サイドバックに入る。坂本も下がって5枚で守ることがある。
一方、芳野を右に置くと右肩上がりになり、安藤がセンターバック、塩浜や坂本が左サイドバックを担う4枚の形になる。
選手を一人入れ替えるだけで、チーム全体のバランスが変わる。
そこで生まれるのが、高さの問題だ。右からクロスを入れられたとき、ゴール前にどれだけ高さを確保できるのか。
攻撃のための交代が、別の場所に課題を生む。誰を入れるかだけでなく、その選手によって周囲の役割がどう変わるのか。そこまで準備できているかが大切になる。
4. 一つずつ対応していく。でも、常に一手遅い
失点後、鳥栖は阿部を左に移すなど、配置を変えて対応していた。右からのクロスに高さを担保しようと、一つずつ手を打っていた。
ただ、常に一手遅い。
特に気になったのが、若月へのロングボールだ。競り合いに対応し、その後のセカンドボールを拾う。この一連の流れに、鳥栖は対応しきれなかった。
大切なのは、競り合いに勝つことだけではない。相手が競り勝ったとき、どこにボールが落ちるのか。その周囲に誰がいるべきなのか。
セカンドボールを拾えないのは、単に一度の競り合いに負けたという話ではない。ロングボールを含めた一連の攻防で、相手のほうが準備できていた。
鳥栖の対応が、まだ試合のスピードに追いついていない。そんな印象を受けた。
5. 新潟が積み上げてきたもの
今回、最も大きかったのはここだと思う。
新潟はポゼッションだけで勝負していたわけではない。ロングボールを入れ、競り合い、セカンドボールを拾う。百年構想リーグのなかで練習し、積み上げてきたものなのだろう。
バウマン、モラエスに賭ける。その割り切りと徹底する覚悟があった。
何でもできるチームを目指すのではなく、自分たちが勝つために何を武器にするのか、どこで勝負するのかを明確にしている。
それは個人の能力だけでは説明できない。チームとして共通認識があり、その積み重ねが試合のなかで差になっていた。
鳥栖もポゼッションを大切にし、ボールを動かして相手を崩そうとしていた。戦術的にも、スタッツ的にも、新潟を上回るものは見せている。それは否定する必要がない。
ただ、数字で示せる部分と、勝負どころで発揮される完成度は必ずしも同じではない。
新潟はやるべきことが明確だった。鳥栖は、その場その場で対応を繰り返している。
この差は大きい。
6. 鳥栖は、これから。
今回の試合を見て、鳥栖がやっていることは間違っていないと思う。3連勝も偶然だけではないし、戦術的な狙いも、スタッツに表れる積み上げもある。
だからこそ、すべてを否定する必要はない。
ただ、細部へのこだわりはまだまだ必要だ。
このボールが入ったら、次はこうする。「この選手なら、ここにいてくれる」「ここまでやってくれる」。そう信じられるだけの共通認識が、チームのなかにどこまであるのか。
個人を信頼することと、チームとして同じ絵を描けることは少し違う。
新潟には、その積み上げが見えた。鳥栖には、まだ足りない部分があった。それは簡単に埋まる差ではないのかもしれない。
新潟に負けたからといって、すべてが間違っていたわけではない。やろうとしていることは間違っていない。
でも、それを勝てる形にするには、まだまだやるべきことがある。
今回の敗戦は、そのことを改めて確認させられる一戦だった。
鳥栖は、これから。だからこそ、悔しい。
勝ちながら積み上げていけるチームが昇格するのだろう。
そこを見ていきたいと思う。
※ この記事は、2026年10月22日にアメブロ「虚言」で書いたものを移しました。

